島若夫(京山幸城)

島若夫(京山幸城)

島若夫・ミスひろみ時代(関係者提供)

トリオ時代

 人 物

 しま 若夫わかお
 ・本 名 中口 亨
 ・生没年 1930年6月3日~2001年7月2日
 ・出身地 鳥取県(京都説もある)

 来 歴

 島若夫は戦後活躍した漫才師。安来節一座を経営する両親の間に生まれ、幼くして漫才師として舞台に立つ。戦後、大阪へ出て島ひろしの門下におさまり、ミスひろみと漫才コンビを結成。中堅として売り出したが、中年から志をかえて浪曲師に転向。「京山幸城」を襲名した。

 出身地は二つある。芝清之の『東西浪曲大名鑑』では鳥取県鳥取市。一方、『日本演芸家名鑑』では京都市の生まれとある。

 鳥取の学校を出ている所を考えると、鳥取が本籍のようであるが、親が旅芸人だった関係から京都で生まれた可能性は否定できない。いとし・こいしやかしまし娘などと同じパターンである。

 幼くして父母の一座で旅暮らしを続け、6歳にしてデビュー。当初は少年民謡家として舞台に立っていた。

 一応地元の学校にも出入りをしていたようで、『浪曲事典』では鳥取大正高卒――とある。なんだと思って調べたら、どうも鳥取大正小学校の高等尋常科を出たらしい。

 学校卒業後、少年兵として志願をし、予科練に合格――という所を見ると優秀な生徒だったのだろう。

 土浦航空隊に配属され、少年兵としての教育を受けている最中に終戦。航空隊は解散となり、地元に戻る事となった。

 1946年、芸人を志し、旅回りの歌舞伎一座・嵐滝三郎一座に入団。歌舞伎俳優を夢見るがあえなく挫折。

 今度は漫才師を志し、五条家金玉という凄まじい漫才師の弟子になり、漫才師・楽団員として全国を回った。この人は五条家弁慶・牛若の相方だという――

 しばらく金玉一座にいて独立し、関西へ上る。『日本演芸家名鑑』によると「3年ほど京都で演歌師生活」をしていたという。幼いころからの芸人とだけあって、ギターやアコーディオンは一通り引ける器用な芸人として知られていた。

 1952年、当時売り出しの島ひろし・ミスワカサに入門。「島若夫」と名付けられて、島ひろし付の漫才師となる。

 1955年、ミスワカサ門下のミスひろみ(1936年~)と結婚し、「島若夫・ミスひろみ」を結成。師匠の推薦で松竹に入り、角座や浪花座の舞台に立つようになった。

「歌謡ショウ」を自称したように二人が楽器を持って出て、流行歌やコミックソングを歌いまくる舞台で注目されたという。

 なお、このひろみとは後年結婚し、夫婦となった。ひろみは「中川絹子」が本名である。

 1960年には「島若夫ショー」を結成、松竹演芸の中堅として相応な出番と人気を集めていたが、30代を過ぎて単純な漫才への疑問を抱くようになったらしい。

 松竹を退社し、「京栄プロ」を設立。興行と実演を兼ねるようになった。

 そこで目を付けたのが以前より好きだった浪曲であった。演芸界隈で一家を成していた演芸作家の室町京之介に相談を持ちかけたところ、「やるなら本格的な師匠につくべき」と、二代目京山幸玉を斡旋してくれた。

 この二代目幸玉は初代京山幸枝若の兄弟子にあたる人で、地味でこそあれ風格を持った芸人として知られていた。責任感と礼儀作法にもうるさい人としても有名で、そんな堅実な人柄に室町京之介はこの異色の人物を立てる気になったのだろうか。

 1971年1月、京山幸玉に正式に入門。「京山島太夫」と名付けられる。既に芸人として出来上がっており、声も良かった関係から幸玉は一から仕込む事なかったようである。

 半年ばかり厳しい稽古や礼儀を学んで、1971年8月、大阪市郵便貯金ホールで「京山幸城襲名披露公演」を実施。師匠から教わった「破れ太鼓」を演じて初舞台を踏んだ。

 この襲名を機に、弟の中口三郎に島若夫を禅譲。三郎は二代目島若夫として活躍を続けることとなる。

 浪曲師になり、浪曲親友協会に所属するようになったものの、内政にはそこまで関与せず、浪曲大会等にも出席しなかった。

 妻のひろみ、弟の三郎、弟子の一夫などを率いて「島若夫ショー」という歌謡浪曲ショーを展開し、主に地方巡業や余興の舞台で活躍した。

 浪曲師としては「太閤記」「義士伝」「破れ太鼓」などオーソドックスな代物を得意とした。

 襲名後、思う所あって愛媛県道後温泉に移住。仕事の傍らで調理師免許を取得。道後温泉のすぐ近くで民謡酒場を開き、経営に勤しむ事となる。

 民謡酒場での実演を中心に四国・関西近郊の巡業を行って稼いでいた。当人は「正岡子規の生涯を浪曲にしてやりたい」と、これを生涯の目標としていた。

 1990年代まで活躍を続けていたが、晩年病に倒れた。『演芸連合』によると、「平成13年7月2日没」との由。

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